改善基準告示とは|トラック運転者の拘束時間・休息・連続運転(2024年改正)
改善基準告示は、トラックやバス、タクシーの運転者の働き方を定めた基準です。正式名称は「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」。令和4年12月に改正され、令和6年(2024年)4月1日から新しい数値が適用されています。長時間労働になりやすい運転者の健康と安全を守るため、1日の拘束時間や休息期間、連続運転時間などに具体的な上限を設けているのが特徴です。
この記事の信頼性について
1改善基準告示とは — 何を、誰に定めた基準か
改善基準告示は、自動車運転者の労働時間や休息のあり方を定めた厚生労働大臣の告示です。労働基準法だけでは運転者の長時間労働を十分に防げないため、運転者に特化した上乗せの基準として設けられています。
対象はトラック・バス・タクシー(ハイヤー含む)の運転者で、業種ごとに数値が分かれています。トラック運転者については、拘束時間・休息期間・連続運転時間・運転時間といった項目に上限や基準が決められています。
令和4年12月に改正告示が公布され、令和6年4月1日から適用が始まりました。同じ令和6年4月から、自動車運転業務にも時間外労働の年960時間という上限規制がかかるようになり、その流れにあわせて拘束時間などの数値も見直されています。古い教材や資料には改正前の数値が残っていることがあるため、必ず改正後(令和6年4月適用)の値を使ってください。
この記事で扱う「拘束時間」「休息期間」など用語そのものの定義は、用語解説のページに譲ります。ここでは数値と運用に絞って説明します。
2トラックの拘束時間 — 1日・1か月・1年の上限
拘束時間は、始業から終業までの全時間です。労働時間と休憩時間を合わせた、会社に拘束されている時間を指します。トラック運転者の拘束時間には、1日・1か月・1年それぞれに上限があります。
| 期間 | 原則 | 協定での延長 |
|---|---|---|
| 1日 | 13時間以内 | 最大15時間(14時間超は週2回までが目安) |
| 1か月 | 284時間以内 | 年6か月まで310時間まで |
| 1年 | 3,300時間以内 | 3,400時間以内(協定による延長時) |
1日の拘束時間は、始業時刻から起算して24時間で判断します。原則は13時間以内、延長しても最大15時間までです。ただし15時間まで延ばせるのは例外的な扱いで、14時間を超える回数はできるだけ少なくするよう努めます。その目安が「1週間について2回まで」です。ここを「1か月について2回」と取り違えないよう注意してください。
1か月の拘束時間は原則284時間以内です。労使協定を結べば、1年のうち6か月までは310時間まで延長できます。ただし延長する場合でも、1年の総拘束時間は3,400時間以内に収めなければなりません。協定による延長をしない場合は、1か月284時間・1年3,300時間が上限です。
協定で月284時間を超えて延長するときは、さらに二つの制約があります。月284時間を超える月が3か月を超えて連続しないこと、そして月の時間外労働と休日労働の合計を100時間未満にするよう努めることです。
3休息期間と連続運転 — 勤務間の確保と4時間ごとの中断
休息期間は、ある勤務が終わってから次の勤務が始まるまでの、業務から完全に解放される時間です。睡眠や私生活にあてる時間にあたります。
トラック運転者の休息期間は、勤務終了後に継続11時間以上を与えるよう努めることが基本です。これは努力義務として基本に位置づけられ、どうしても確保できない場合でも継続9時間を下回ってはいけません。9時間が絶対の下限です。「11時間は努力、9時間は下限」という二段構えで覚えると整理しやすくなります。
連続運転時間は4時間以内です。運転開始から4時間を超える前に、運転を中断しなければなりません。
中断のしかたにも要件があります。1回が概ね連続10分以上で、合計30分以上の中断が必要です。たとえば10分・10分・10分の3回でも、15分・15分の2回でも、合計が30分以上になれば要件を満たします。逆に、10分未満の短い中断を細切れに積み上げて30分にしても認められません。
なお、サービスエリアやパーキングエリアに駐停車できないなどの事情で、やむを得ず4時間を超えてしまう場合の例外も告示上で示されています。あくまで例外的な扱いです。
4運転時間 — 2日平均と2週平均で見る
運転時間は、実際にハンドルを握って運転している時間です。トラック運転者は二つの平均値で管理します。
・2日平均:2日(始業から48時間)を平均して、1日あたり9時間以内。
・2週平均:2週間を平均して、1週あたり44時間以内。
2日平均は、隣り合う2日の運転時間の平均で判断します。1日だけ9時間を超えても、その日を含む2日の平均が9時間以内なら違反になりません。日ごとの上限ではなく平均で見る点が、ひっかけになりやすいところです。2週平均も同様に、特定の1週が44時間を超えても、隣り合う2週の平均が44時間以内なら違反にはなりません。いずれも「1日」「1週」単位の上限と読み違えないよう注意してください。
5主な例外 — 長距離・隔日勤務・2人乗務・フェリー・分割休息
ここまでが原則です。実務では、長距離輸送や交替運転など事情に応じた例外規定が用意されています。主なものの要点を挙げます。いずれも適用には条件があり、原則からの緩和です。試験では、例外の数値(16時間・20時間・21時間など)を原則の数値と入れ替えたり、適用条件を省いたりするひっかけが作られます。例外はあくまで条件付きの特例である点を意識してください。
・長距離貨物運送の特例:一定の長距離運送で、運行先での休息が住所地以外になる場合、1週について2回まで、最大拘束時間を16時間に、休息期間を継続9時間未満(一定の下限あり)にできる。
・隔日勤務:2暦日の拘束時間を21時間以内とする。一定の仮眠を与える場合は、2週で3回まで24時間まで延長できる。
・2人乗務(車内に身体を伸ばして休息できる設備がある場合):最大拘束時間を20時間まで延長し、休息期間を短縮できる。
・フェリー乗船:乗船時間は原則として休息期間として扱う。
・分割休息:休息を分割して与える特例。1回あたり継続3時間以上で、2分割なら合計10時間以上、3分割なら合計12時間以上。分割できるのは一定期間(1か月が限度)の全勤務回数の2分の1までが目安。
例外は条件が細かく、勤務形態によって適用の可否が変わります。実際に運用する場合は、厚生労働省の告示本文とQ&A、最新の解説資料で必ず条件を確認してください。
6時間外労働の年960時間規制との関係
改善基準告示と並んで押さえたいのが、時間外労働の上限規制です。令和6年4月から、自動車運転業務にも時間外労働の上限がかかるようになりました。原則は月45時間・年360時間、臨時的特別な事情があって労使協定を結ぶ場合でも年960時間が上限です。
両者は別の規制で、目的も根拠も異なります。
・改善基準告示:拘束時間・休息期間・運転時間などを定める厚生労働大臣告示。運転者の健康・安全のための基準。
・年960時間規制:労働基準法に基づく時間外労働の上限。
そのため、年960時間の枠内に収まっていても、改善基準告示の拘束時間や休息期間に違反していれば問題になります。逆も同様です。実務では、両方を同時に満たすよう勤務を組む必要があります。
違反した場合の扱いも異なります。年960時間の上限規制に違反すると、労働基準法に基づき罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)の対象になり得ます。一方、改善基準告示そのものに直接の罰則はありませんが、違反は労働基準監督署の指導の対象となり、貨物自動車運送事業の許可に関わる行政処分(自動車運送事業者への処分)にもつながります。告示違反は事業の根幹に響く、と理解しておくのが実務上は安全です。
7試験対策とバス・タクシー — 深掘りどころと業種の違い
運行管理者試験では、改善基準告示は第4分野「労働基準法関係」で問われます。出題はほぼ数値の暗記で、選択肢は正しい文の数字だけをすり替えて作られます。
試験での出題傾向、第4分野で何問取ればよいか、典型的なひっかけの整理は、労働基準法関係の分野別対策を扱った記事で詳しく解説しています。また、拘束時間や運転時間を計算させる問題の解き方は、計算問題の解法を扱った記事を参照してください。本記事は制度の全体像と数値の根拠に絞っています。
改善基準告示はトラック・バス・タクシーで内容が分かれており、数値の一部が違います。本記事はトラック運転者を中心に説明してきました。
たとえばバス運転者は、1か月の拘束時間や運転時間の管理方法(4週平均で扱う規定など)がトラックと異なります。タクシー運転者は隔日勤務が一般的で、2暦日を単位とした拘束時間の基準が中心になります。同じ「改善基準告示」でも、対象業種を取り違えると数値を誤るため、トラックの基準とバス・タクシーの基準は別物として扱ってください。バス・タクシーの数値が必要な場合は、厚生労働省の業種別のページで確認するのが確実です。
8よくある質問
改善基準告示は、いつから今の数値になりましたか。
改善基準告示に違反すると、どうなりますか。
トラックとバス・タクシーで数値は同じですか。
記事の基本情報
| ジャンル | 分野別対策 |
|---|---|
| タグ | 改善基準告示 / 拘束時間 |
公式情報の確認
公式情報の確認:運行管理者試験の最新情報は、公益財団法人 運行管理者試験センター(公式)などの公式情報を必ず確認してください。本人に割り当てられた試験会場は受験票の表記が正本です。